高学歴なのに幸せになれない女性が思いついた女子力という言葉。

前回のブログに書いたように、女子力という言葉は、「女性であることを活かして得する力」と定義できます。男性からチヤホヤされる力だけでなく、仕事で有利な立場を得る力も含まれます。ダサい服を着てボサボサの頭でプレゼンするより、ミニスカートでバッチリ決めて女子力を高めてプレゼンした方が、きっとうまくいくに違いないというわけです。


女子力はもっぱら女性が使う言葉であり、男性はほとんど口にしません。つまり女性が持つ固定観念を土台に発展した言葉です。女子力の有無は多くの場合、外見上の魅力で測られますが、時には、料理が上手など、日本の古き伝統の中で良き母親に求められた能力が備わっているかどうかで測られることもあります。


また女子力は、前回のブログで指摘した通り、美人か不美人かというような生まれつきの要素を基準に決まるものではなく、努力すれば向上するものとされています。その意味で、女子力は学力に似ています。というか、女子力という言葉自体が、学力という言葉を模したものです。女性誌や女性向け書籍をみれば、そのことがよく分かります。女子力アップのための傾向と対策集が、これでもかこれでもかというくらいに紹介されています。そう、女子力は学んで身に付けるものというのが、暗黙の了解なのです。


最初に誰がこの言葉を使ったのかは、定かではありません。が、2009年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされたようですから、10 年ほど前から頻繁に使われるようになったのでしょう。では、なぜこの時期に女子力という言葉が浸透したのか?当時は、もっぱら女性向けの雑誌の特集で、女子力が語られていたと思います。ということは、当時の女性誌の制作サイドにいた人たちが、この言葉を流行らせた原動力だったと考えられます。その人たちには、どんな特徴があったのでしょう。


当時、つまり2000年代の最初の10年ですが、この時期に、女性誌で編集長だったりデスクだったりした女性(当時30 代〜40代の女性)というのは、1980年代から90年代に社会に出た人たちです。
1986年に男女雇用機会均等法が施行され、それ以降は、女性も男性と同じように働いて当たり前という雰囲気が社会の中で醸成されていきました。そしてこの頃、女子の大学進学率がぐんぐん上昇しました。親が娘に対し「女の子は短大を出ていればいい。4大なんて行くと婚期が遅れる」と言っていた頃の古い時代の価値観に取って代わり、「女子も4年生大学に行って当たり前」という新しい価値観が浸透した時代でもあります。その証拠に1990年頃までは、女子の間で大人気だった、青山学院短大や学習院短大も入学希望者が年々減少していき、今では両校とも新規の募集を停止しています。


そして、女子力という言葉を浸透させた女性たちは、まさにこの時代が移り変わった直後に社会人になった人たちなのです。

女子力という言葉を広める言動力になった女性たちは、自分のお母さんよりも高学歴である場合が多い。そしてお母さんは専業主婦だったのに、自分は、職場で男性と同等に残業をこなし、ある程度の役職にいた人が多い。一方で、晩婚化が進み、「お一人様」という言葉が流行ったように、結婚しない、あるいは結婚しても出産しない女性がかなり多い。ということが言えます。


この女性たちの潜在意識の中にはこんな思いがあったのではないかと推察できます。「どうしてわたしは、お母さんよりも頑張って勉強して、良い大学にも入ったし、毎日遅くまで働いているのに、お母さんよりも幸せそうではないのだろう」、「お母さんは、お父さんが買った家で暮らし、家事と子育てをしているだけなのに、女性として恵まれているように見えるのは、どうしてなのかなぁ」、「私だって、女の子なんだからもっと楽をしたいし、男の人から可愛がられたい」。しかし、彼女たちには、口が裂けてもそんなことは言いません。何しろ彼女たちは、高学歴で教養がありますから!口を開けば「男女平等であるべき」と、言ってきた世代ですからね。


そんな彼女たちの屈折した思いを上手く言い表したのが、“女は女子力がなければ幸せになれない”という定理だったのです。


今さら、実はお金持ちのお嫁さんになって専業主婦をしながら趣味でハーブのお店を経営するのが夢だなんて、言えるわけありません。また実際のところ、あまりパッとしない男と結婚して専業主婦になって今の自分が持っている仕事やレクリエーションに付随する楽しみを放棄するのも嫌なのです。でも、女としての幸せは欲しい。


こんなふうに感じていた女性たちにとって、学力を模した言葉、女子力は、実にしっくりくる言葉でした。あからさまにチヤホヤされたいというのではなく、女子力という力を持ちたいと言えば、自分のことを男女同権を肯定する自立した女性だと思うことができます。彼女達には、受験勉強で頑張ったという経験がありますから、頑張れば報われるという考え方には、素直に賛同できます。傾向と対策という考え方は、偏差値教育のおかげですっかり身についています。結果として短期間のうちに、彼女たちの需要を満たすための、女子力アップのためのハウツーが巷に溢れるようになります。ということで、女子力は、21世紀の最初の10年間、日本の独身女性たちにとって一大テーマとなったのです。


この女子力は、今では「自分らしさ」という新しいキーワードにとって代わられようとしていますが…。自分らしさについて説明する前に、もう少し女子力について解説します。


この女子力という言葉は、企業にとってもとても都合がよかったので、一気に普及することになりました。次回は、そのことについて書いてみます。

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